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研究概要

 産業革命から続く工業、産業の発展や西洋文明の拡大により我々の生活は飛躍的に向上しました。しかしエネルギー特に化石燃料消費量 の増大により、地球規模の環境破壊や将来的なエネルギー不足という大きな問題に直面しています。これらの問題を解決し、且つ今後も発 展を続ける社会を成立させるためには、太陽エネルギーなどの再生可能なクリーンエネルギーの利用や、限られた化石燃料の高効率利用に 基づく持続的発展可能なエネルギーシステムの構築が必要です。
 そのため、湯上/清水研究室では、限りある資源の有効利用・効率的なエネルギー変換に注目し、環境を守りながらエネルギーを安定供給するための研究を行っています。

熱ふく射制御によるエネルギーシステムの高効率化

 全ての物体は気体,液体,固体を問わずその物体の温度に基づく光(電磁波)を出していて,その電磁波のことを熱ふく射(放射)と言います。あまり日常では使われない言葉ですが,太陽からの光は太陽が持つ6000Kという非常に高い温度により放射された熱ふく射であり,我々の生活に非常に密接に関係しています。太陽以外でも溶鉱炉のように物体の温度が数百度を超えると人間の目にも見える熱ふく射が放射されます。
 熱ふく射が物体に降り注ぐと物体は固有の特性に従って光を吸収したり,反射したりします。その度合いが放射(吸収)率,透過率,反射率です。例えば夏場に黒い服を着るのと白い服を着るので暑さが違くなるのは黒い服の方が太陽の熱ふく射光を吸収しやすい(吸収率が高い)からです。同様に放射率の高い物体は,同じ温度でも放射率の低い物体に比べて多くの熱ふく射光を出すことができます。
 ところで太陽光(可視光)には紫外線,紫~赤といった色々な光が含まれているのはよく知られています。これは熱ふく射が実は単色な光ではなく,さまざまな波長の光が集合していることを示しています。実際,太陽からの熱ふく射光で最も光が強いのは,波長0.5マイクロメートル付近で,その後赤外線領域に向けて徐々に強度が落ちていきます。同様にですが,物体の光に対する特性(光学特性)も光の波長により変わります。
 例えば,黒いのは可視光領域で吸収率が高いためで赤外線域の吸収率の大小とは関係ないため赤外領域の吸収率が低い服を作ってやれば黒い服だけど,白い服と同じように涼しく感じる服が作れるかもしれません。

 我々は上で説明した物体の光学特性,特に放射(吸収)率のスペクトル特性(波長依存性)を様々な方法で制御し,波長選択性を持たせることで,熱ふく射に関係した様々なエネルギーシステムの高効率化を目指しています。

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固体イオニクスに基づくエネルギー変換デバイスの開発

 生理食塩水やポカリスウェットはさまざまな種類のイオンを含んだ液体で,電解質と呼ばれます。固体イオニクスは固体でありながら電解質と同じようにイオンが移動することが可能なポリマー,ガラス,セラミックスに関する学問分野です。固体電解質には液体電解質と同じく,電場をかけたり,周辺の物質濃度が異なるとイオンが移動するという性質を持つため,化学エネルギーと電気エネルギーを相互に変換するエネルギー変換デバイスによく用いられています。固体電解質が用いられているエネルギー変換デバイスには各種ありますが,代表的な例としてポリマー電解質型燃料電池(PEFC),固体酸化物型燃料電池(SOFC)などの燃料電池や全固体型のリチウムイオン電池などがあります。

 我々は燃料電池,中でも機能性セラミックスを固体電解質として用いたSOFCに注目しています。SOFCは機能性セラミックスを電解質としており,イオンが移動するのに熱エネルギーが必要となるので,常温で作動可能なPEFCとは異なり作動温度が数百度以上と高く,自動車用などではなく,家庭用,中小規模発電所用として開発が進められてきました。2011年の冬には世界に先駆けてJX日鉱日石エネルギー家庭用のSOFCによるコジェネレーションシステムが一般発売されています。SOFCの他の発電方式に対する優位点は下に示すように単体での発電効率の高さと小規模でも効率が低下せずスケールメリットがないことです。そのため一般販売されているシステムでも発電効率45%(LHV)を達成していますし,温水供給として回収できる熱まで加えると総合熱効率は80%を超えます。我々は様々な材料の開発や高性能な将来型 SOFC/SOEC システムに関する研究を行っています。

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